預貯金の仮払い制度【2026年版】|葬儀費用に150万円まで使える・必要書類と手順を完全解説
銀行口座は死亡を知った時点で凍結される
故人の銀行口座は、金融機関が死亡の事実を知った時点で凍結されます。役所への死亡届だけでは銀行には連絡が行かないため、通常はご遺族からの連絡や新聞のお悔やみ欄掲載がきっかけです。
凍結されると、ATM での引き出しはもちろん、自動引き落としもストップします。葬儀費用や当面の生活費に困るご家族のために、2019 年の民法改正で 預貯金の仮払い制度 が新設されました。
仮払いできる金額の計算式
法律上の計算式はシンプルですが、実務では「上限 150 万円」の制約で頭打ちになることが多いです。
仮払い可能額 = 死亡時の口座残高 × 1/3 × その相続人の法定相続分
ただし 1 金融機関あたり最大 150 万円
計算例
| ケース | 残高 | 法定相続分 | 計算結果 | 引き出し額 |
|---|---|---|---|---|
| 配偶者1人+子1人で、配偶者が請求 | 600 万円 | 1/2 | 100 万円 | 100 万円 |
| 同上、残高 1,200 万円なら | 1,200 万円 | 1/2 | 200 万円 | 150 万円(上限) |
| 子 3 人、長男が請求 | 600 万円 | 1/3(子全員で2/3 ÷ 3) | 約 44 万円 | 44 万円 |
| 配偶者と子 2 人、配偶者が請求 | 900 万円 | 1/2 | 150 万円 | 150 万円(上限) |
→ 残高が 900 万円を超えれば、配偶者は上限 150 万円 に到達します。
複数の銀行を活用する戦略
「150 万円上限」は 1 金融機関ごと の制限です。複数の銀行に口座があれば、それぞれから 150 万円ずつ引き出せます。
| 銀行 | 残高 | 仮払い可能額 |
|---|---|---|
| みずほ銀行 | 800 万円 | 約 133 万円 |
| 三菱 UFJ 銀行 | 1,200 万円 | 150 万円(上限) |
| ゆうちょ銀行 | 600 万円 | 100 万円 |
| 合計 | 2,600 万円 | 約 383 万円 |
→ 通常 300〜400 万円程度の葬儀費用ならカバーできるケースが多いです。
必要書類
各金融機関で多少違いますが、基本セットは以下:
- 故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- 2024 年 3 月から戸籍の広域交付制度で最寄り役所一括取得が可能
- 請求する相続人の現在戸籍 + 印鑑証明書(発行 3〜6 ヶ月以内)
- 請求者の本人確認書類(運転免許証等)
- 金融機関所定の請求書(窓口で渡される)
- 故人の通帳・キャッシュカード(あれば)
→ 法定相続情報一覧図を取得していれば、戸籍の束を毎回提出する手間が省けます。
手続きの流れ
- 銀行に連絡 ― 「故人の口座から仮払い制度を使いたい」と伝える
- 必要書類の案内を受ける(電話 or 窓口)
- 書類を準備(戸籍取得に 1〜2 週間)
- 書類を提出(窓口 or 郵送)
- 審査(通常 2〜10 営業日)
- 指定口座に振込
→ 連絡から振込まで 2〜4 週間 が一般的。葬儀費用の支払期限(葬儀後 1〜2 週間)と重なるため、葬儀社との支払期限調整が必要です。
150 万円で足りない場合:家庭裁判所の仮分割審判
葬儀規模が大きい・相続税納付の納期が迫っているなど、150 万円では足りない場合は 家庭裁判所への仮分割の申立て が選択肢です。
| 項目 | 仮払い制度 | 家庭裁判所の仮分割 |
|---|---|---|
| 上限額 | 150 万円/金融機関 | 上限なし |
| 必要な手続き | 銀行窓口 | 家裁の審判申立 |
| 所要期間 | 2〜4 週間 | 1〜3 ヶ月 |
| 他相続人の同意 | 不要 | 不要 |
| 費用 | 戸籍取得実費のみ | 申立費用 + 弁護士費用(依頼すれば) |
緊急性が高ければ「複数銀行を組み合わせて仮払い」、金額が大きければ「仮分割審判」と使い分けます。
注意点
❌ 引き出した金額は遺産分割で精算される
仮払いで引き出した金額は、後の遺産分割協議で「請求した相続人が既に取得した分」として扱われます。「先取り」ではなく「前借り」の感覚です。
❌ 使途を必ずメモ・領収書保管
葬儀費用に使った分は相続税の債務控除対象になりますが、領収書がないと税務署が認めません。引き出した分を何に使ったかは家計簿レベルで記録しておきましょう。
❌ 借金がある場合は要注意
故人に多額の借金があり相続放棄を検討中なら、仮払いで引き出して**葬儀費用以外に使うと「単純承認」**とみなされ、相続放棄ができなくなるリスクがあります。
まとめ
- 仮払い制度 は 2019 年新設、葬儀費用や当面の生活費に使える
- 計算式:残高 × 1/3 × 法定相続分、ただし 1 金融機関 150 万円が上限
- 複数銀行を組み合わせれば 300〜400 万円程度 はカバーできる
- 不足するなら 家庭裁判所の仮分割審判(1〜3 ヶ月)
- 銀行口座の相続手続き全体もあわせて確認
凍結された口座は「動かない壁」ではありません。仮払い制度を正しく使えば、葬儀費用で家計が立ち行かなくなる事態は十分に防げます。
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