身近な人が亡くなったら|最初の7日〜10ヶ月の手続きを時系列で解説
はじめに
身近な方が亡くなると、悲しみの中でも手続きは待ってくれません。死亡届の提出から相続税の申告まで、遺族がやるべきことは数十件にのぼり、それぞれに期限があります。
厄介なのは、これらの手続きが一覧でまとまった公的な案内がほぼ存在しないことです。役所に聞いても「うちの管轄はここまでです」と言われ、全体像を把握するだけで一苦労します。
この記事では、身近な方が亡くなった後に必要な手続きを「いつまでに・何を・どこで」という時系列で整理しました。すべてを一度にやる必要はありません。まずは全体像を掴んで、優先順位をつけるところから始めてください。
亡くなった直後〜7日以内
最初の1週間は、葬儀の準備と並行して最低限の届出を済ませる期間です。
死亡届の提出が最優先です。亡くなった事実を知った日から7日以内に、市区町村役場に届け出る義務があります(戸籍法第86条)。届出をしないと火葬許可証が発行されず、葬儀を進めることができません。ただし実務上は、葬儀社がほぼすべてを代行してくれるケースがほとんどです。
ここで絶対にやっておくべきなのが、死亡届のコピーを5〜10部取ることです。原本は役場に提出してしまうので手元に残りません。この後の銀行手続き、保険金請求、年金届出など、あらゆる場面でコピーが必要になります。
死亡届と同時に火葬・埋葬許可証の取得も申請できます。窓口で一緒に手続きしておきましょう。
14日以内にやること
葬儀が終わり少し落ち着いたら、次の届出に取りかかります。
健康保険の資格喪失届を、国民健康保険なら市区町村役場、社会保険なら故人の勤務先に届け出ます。保険証の返却も同時に行います。故人の扶養に入っていた家族がいる場合は、新たな健康保険への加入手続きも必要になるので注意してください。
故人が年金を受給していた場合は、年金受給権者死亡届を年金事務所に提出します。届出が遅れると年金が過払いになり、後日返還を求められることがあります。厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内が期限です。
あわせて未支給年金の請求も行いましょう。年金は後払いのため、亡くなった月の分まで受給する権利があり、遺族が請求できます。年金受給権者死亡届と同時に手続きするのが効率的です。
その他、世帯主変更届(故人が世帯主だった場合)や介護保険の資格喪失届(介護サービスを受けていた場合)もこの時期に済ませます。
速やかに対応すべきこと(明確な期限なし)
法定の期限はないものの、放置するとお金が出ていったり、悪用されるリスクがあるものです。
クレジットカードの解約は早めに行ってください。年会費の発生防止と不正利用防止のためです。ただし、クレカを解約してもサブスクリプションが全て止まるわけではありません。キャリア決済やApple ID経由の課金は、個別にサービスごとの解約が必要です。
携帯電話の解約・名義変更も重要です。解約しないと月額料金が発生し続けます。特にキャリア決済でサブスクを契約していた場合は、携帯解約前に個別のサブスク解約を済ませてください。
公共料金の名義変更(電気・ガス・水道)は、同居家族が継続利用するなら名義変更、利用しないなら解約です。口座引き落としの場合、口座凍結前に引き落としが継続する可能性があるため早めの連絡を推奨します。
その他、運転免許証の返納、パスポートの失効手続きなども、悪用防止のために速やかに対応しておきましょう。
3ヶ月以内 — 相続放棄の判断
ここが最も重要な期限の一つです。
故人に借金やローンの残債がある場合、相続放棄をしなければ相続人がその借金を自動的に引き継ぎます。相続放棄ができるのは「相続の開始を知った日から3ヶ月以内」です(民法915条)。この期限を過ぎると、原則として相続放棄はできなくなり、借金の相続は不可逆になります。
「まさか借金があるとは思わなかった」というケースは珍しくありません。故人の財産と負債の全体像を早めに把握し、判断が必要な場合は弁護士や司法書士に相談してください。3ヶ月以内に判断がつかない場合は、家庭裁判所に「熟慮期間の伸長」を申し立てることも可能ですが、これも3ヶ月以内に行う必要があります。
4ヶ月以内 — 準確定申告
故人が個人事業主だった場合や、給与以外の所得があった場合は、準確定申告が必要です。故人の1月1日から死亡日までの所得について、相続人が代わりに確定申告を行います。期限は相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内です。
該当するかどうか判断が難しい場合は、税理士に相談することをお勧めします。
10ヶ月以内 — 相続税の申告
故人の遺産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、相続税の申告・納付が必要です。期限は相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。
この期限を過ぎると、延滞税や加算税が発生するだけでなく、配偶者控除(1億6,000万円まで非課税)が適用できなくなるという重大なリスクがあります。数百万円〜数千万円の損失につながりかねないため、該当する可能性がある場合は早めに税理士に相談してください。
また、故人が不動産を所有していた場合は相続登記が必要です。2024年4月から義務化され、3年以内に登記しないと10万円以下の過料の対象となります。手続きが複雑なため、司法書士への依頼を推奨します。
その他の手続き
上記以外にも、故人の状況に応じてさまざまな手続きが発生します。
金融機関の口座がある場合は銀行口座・証券口座の相続手続き、生命保険に加入していた場合は死亡保険金の請求(期限3年)、自動車を所有していた場合は自動車の名義変更や保険の手続き、遺言書がある場合は家庭裁判所での検認——と、一人ひとり必要な手続きは異なります。
故人がNetflixやSpotifyなどのサブスクリプションを契約していた場合は、個別の解約手続きも必要です。NHKの受信契約や固定電話の解約、SNSアカウントの追悼化なども、デジタル遺品として対応が求められる時代になっています。
まとめ
身近な方が亡くなった後の手続きは、大きく分けると以下の時系列で進みます。
- 7日以内: 死亡届・火葬許可(まずはここだけ集中)
- 14日以内: 年金停止・健保喪失届
- 速やかに: クレカ解約・携帯解約・公共料金
- 3ヶ月以内: 相続放棄の判断(最重要)
- 4ヶ月以内: 準確定申告(該当者のみ)
- 10ヶ月以内: 相続税申告(該当者のみ)
- 随時: 銀行・保険・不動産・デジタル遺品
全部を一人でやろうとする必要はありません。まずは全体像を把握して、期限が近いものから一つずつ片付けていくことが大切です。
この記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の状況については必ず専門家にご相談ください。