みおくりナビ
相続公開: 2026年7月27日

配偶者居住権とは|残された配偶者が自宅に住み続けられる権利をわかりやすく解説

配偶者居住権とは

配偶者居住権は、2020年4月に施行された比較的新しい相続の制度です。亡くなった方が所有していた家に住んでいた配偶者が、その家に亡くなるまで(または遺産分割などで定めた一定期間)無償で住み続けられる権利をいいます。

ポイントは、自宅の権利を「住む権利(配偶者居住権)」と「所有権」の2つに分けられることです。配偶者は「住む権利」だけを取得し、所有権は子などが相続する、という分け方ができます。

なぜ必要?自宅と預貯金の両立

この制度ができた背景には、残された配偶者の「住まいか、生活資金か」という悩みがあります。

たとえば、夫が亡くなり遺産が「自宅2,000万円・預貯金2,000万円」、相続人が妻と子1人だったとします。妻が法定相続分どおりに分けると、自宅(2,000万円)を相続すると預貯金はほとんど受け取れず、住む場所はあっても生活費に困ることがありました。

配偶者居住権を使うと、自宅の権利が「住む権利」と「所有権」に分かれ、住む権利は所有権より評価額が低くなります。妻は評価の低い「住む権利」を取得することで、住まいを確保しながら預貯金も相続できるようになります。これが最大のメリットです。

成立の要件

配偶者居住権が成立するには、次の要件を満たす必要があります。

相続開始時(亡くなった時点)に、配偶者がその建物に現に住んでいたこと。そして、遺産分割・遺言による遺贈・死因贈与のいずれかによって配偶者居住権を取得すること。この2つが基本です。なお、その建物が故人と配偶者以外の第三者との共有だった場合には、配偶者居住権は成立しません。

登記をしておく

配偶者居住権を取得したら、建物に登記をしておくことが重要です。

登記をしておかないと、所有権を相続した人がその建物を第三者に売ってしまった場合などに、新しい所有者(買主)に対して「私には住む権利がある」と主張できません。配偶者居住権の登記は、所有者となった相続人と協力して行います。安心して住み続けるために、早めに登記を済ませておきましょう。

配偶者短期居住権との違い

似た名前の制度に「配偶者短期居住権」があります。これは別物です。

配偶者短期居住権は、遺産分割がまとまるまでの間など、最低でも相続開始から6ヶ月間は、配偶者が無償で自宅に住み続けられる権利です。手続きや登記をしなくても当然に認められる、短期的・暫定的な保護です。一方の配偶者居住権は、登記をして長期的(原則として終身)に住み続けるための権利という違いがあります。

配偶者が亡くなったときの扱い

配偶者居住権は、その配偶者だけに認められた一身専属の権利です。配偶者が亡くなると権利は消滅し、相続の対象にはなりません。

その結果、残された配偶者が亡くなったときの相続(二次相続)では、配偶者居住権の分が課税対象にならず、相続税の負担を抑える効果につながる場合があります。一方で、配偶者居住権は途中で売却・譲渡ができないなどの制約もあるため、設定するかどうかは家族の状況をふまえて検討する必要があります。

まとめ

配偶者居住権は、残された配偶者が自宅に住み続けながら預貯金などの生活資金も相続しやすくするための制度です。相続開始時にその家に住んでいたこと、遺産分割や遺言で取得することが要件で、安心のためには登記が欠かせません。配偶者の死亡で消滅するため二次相続の負担軽減にもつながりますが、譲渡できないなどの制約もあります。自宅と生活資金のバランスに悩む場合の選択肢として知っておくとよいでしょう。

なお、本記事は一般的な情報です。配偶者居住権を設定するかどうかや評価額の計算は専門的な判断を伴うため、司法書士・税理士・弁護士などにご相談ください。

あなた専用チェックリスト

あなたの場合、何の手続きが必要ですか?

続柄・お住まい・年金の種類などを 39 問でお伺いし、107 件の 手続きからあなたに必要なものだけを、期限順に整理します。

作成されるリストのイメージ
死亡届の提出7日以内
年金受給の停止14日以内
相続登記の申請期限の目安
+ あなたの状況に応じて、ほか数十件を自動で抽出
無料でチェックリストを作成する →

約 10 分で、あなたに必要な手続きの件数と期限が、その場で無料でわかります。

よくある質問

Q.配偶者居住権とは何ですか?
2020年4月に新設された制度で、亡くなった方の持ち家に住んでいた配偶者が、その家に亡くなるまで(または一定期間)無償で住み続けられる権利です。自宅の権利を『住む権利(配偶者居住権)』と『所有権』に分けることで、配偶者が住まいと生活資金の両方を確保しやすくする狙いがあります。
Q.配偶者居住権を使うとどんなメリットがありますか?
自宅の所有権をそのまま相続すると評価額が高く、預貯金など他の財産を受け取りにくくなることがあります。配偶者居住権は所有権より評価額が低いため、住まいを確保しつつ預貯金も相続しやすくなり、生活費の不安を減らせます。
Q.成立にはどんな要件がありますか?
相続開始時に配偶者がその建物に住んでいたこと、そして遺産分割・遺言(遺贈)・死因贈与のいずれかで配偶者居住権を取得することが必要です。建物が故人と配偶者以外の第三者と共有だった場合は成立しません。
Q.登記は必要ですか?
配偶者居住権は登記しておくことが重要です。登記をしないと、所有権を相続した人が建物を第三者に売却した場合などに、その買主に対して住む権利を主張できません。所有者と協力して建物に配偶者居住権の登記を行います。
Q.配偶者が亡くなったら権利はどうなりますか?
配偶者居住権は一身専属の権利で、配偶者の死亡によって消滅します。相続の対象にはならないため、子などへ引き継がれることはありません。この性質は、二次相続(残された配偶者が亡くなったときの相続)での課税を抑える効果につながる場合があります。

この記事が役に立ったら

LINE でシェア

関連記事

相続

相続の戸籍集めを最短に|広域交付制度と法定相続情報一覧図【完全ガイド】

相続手続きで最も時間がかかるのが「戸籍集め」です。2024年3月に始まった戸籍の広域交付制度で、本籍地が遠方でも最寄りの窓口でまとめて取得できるようになりました。さらに法定相続情報一覧図を作れば、集めた戸籍を銀行・年金・登記の各手続きで何度も出し直さずに済みます。2つの制度の使い方・対象者・注意点・必要書類を、順を追って解説します。

相続

相続税の基礎控除はいくら?|3,000万円+600万円×法定相続人の計算式と申告が必要なケース【2026年版】

相続税の基礎控除額の計算式『3,000万円+600万円×法定相続人の数』。相続人1人=3,600万円、3人=4,800万円が控除されます。申告が必要なケースの判定、遺産総額に含める財産、10ヶ月期限のリスク、配偶者の税額軽減1.6億円までを実務目線で解説。無料の相続税概算ツールへの誘導もあり。

相続

所有不動産記録証明制度とは?故人名義の不動産をまとめて調べる新制度をわかりやすく解説

2026年2月開始の所有不動産記録証明制度を使えば、全国どこの法務局でも故人名義の不動産を一覧で証明してもらえます。請求できる人・場所・手数料の考え方、相続手続きでの使い方、未登記建物などの注意点まで解説します。