銀行・証券・保険の相続手続き:共通の必要書類4点と、機関ごとの違い
はじめに:複数の金融機関を回るのは大変、でも書類は共通している
身近な方が亡くなった後、銀行・証券・保険・消費者金融など、複数の金融機関で相続手続きを進める必要があります。
「機関ごとに違う書類を全部揃えないといけないのか?」と不安になる方は多いですが、実は必要書類の8〜9割は共通です。違うのは微細な部分(印鑑証明書の発行期限、所定様式の名前、Web受付の可否など)にすぎません。
本記事では、銀行・証券・保険の相続手続きで共通する必要書類4点と、機関ごとの違いを整理して解説します。
最後に、複数機関を効率的に回るためのコツとして「法定相続情報一覧図を最初に作る」方法もご紹介します。
※ 本記事は一般情報の提供を目的としています。期限・必要書類はあくまで一般的な目安であり、最新情報や個別の判断は各機関の公式案内および専門家(司法書士・税理士・行政書士・弁護士等)にご確認ください。
共通の必要書類 4点
メガバンク・ネット銀行・地方銀行・証券会社・生命保険会社・損害保険会社・消費者金融、いずれの相続手続きでもおおむね共通して必要になるのは、以下の4点です。
1. 法定相続情報一覧図(または被相続人の連続戸籍)
被相続人(亡くなった方)と相続人の関係を証明する書類です。次のいずれかを用意します。
- 法定相続情報一覧図(法務局で取得、無料で何枚でも発行可)
- または 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍・改製原戸籍含む)
複数の金融機関を回る場合、法定相続情報一覧図を最初に法務局で作っておくと、各機関に同じ書類を使い回せます。連続戸籍は分厚く何百枚にもなることが多く、機関ごとに原本を提出するのは現実的ではありません。
法定相続情報一覧図は無料で何枚でも発行できるため、最初の手間さえ越えれば後がぐっと楽になります。
2. 相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書
相続人全員(配偶者・子・親・兄弟姉妹など)の現在の戸籍謄本と印鑑証明書を用意します。
- 戸籍謄本:相続人が誰であるかを確定するため
- 印鑑証明書:相続届に押す実印が本人のものであることを証明するため
印鑑証明書の発行期限は、機関により異なります(後述)。
3. 各機関所定の「相続届」(実印押印)
機関ごとに用意されている所定の様式に、相続人全員(または代表相続人)が署名・実印押印します。
- 銀行:「相続関係届書」「相続手続依頼書」など
- 証券:「相続手続依頼書」「移管手続依頼書」など
- 保険:「死亡保険金請求書」など
呼び方は機関で違いますが、内容は「誰が、何を、どう承継するか」を明示する書類です。
4. 預金通帳・キャッシュカード・保険証券など
被相続人の取引内容がわかるものを用意します。
- 銀行:通帳・キャッシュカード・各種証書
- 証券:取引残高報告書・口座開設のしおり等
- 保険:保険証券・契約書
これらは「故人がその機関にどんな取引をしていたか」を特定するためのものです。手元にない場合でも、本人確認書類と関係証明があれば各機関で照会してくれます。
機関ごとの「微細な違い」5点
共通書類4点に加えて、機関ごとに微妙に異なる部分があります。手続き前に確認すべき項目を整理します。
① 印鑑証明書の発行期限
| 機関 | 発行からの期限の目安 |
|---|---|
| メガバンク(三菱UFJ・三井住友・みずほ) | おおむね 3ヶ月以内 |
| ゆうちょ銀行 | おおむね 6ヶ月以内 |
| ネット銀行(楽天・PayPay 等) | おおむね 3ヶ月以内(一部 6ヶ月) |
| 生命保険会社(第一生命・日本生命 等) | おおむね 3ヶ月以内 |
| 証券会社(SBI・楽天証券 等) | おおむね 6ヶ月以内(機関により異なる) |
| PayPay証券 | 発行から 6ヶ月以内 |
→ 目安として「3ヶ月以内」で揃えておけば、ほぼすべての機関で通る と覚えておけば失敗が少ないです。
3ヶ月を超えそうな場合は、再発行(市区町村役場で1通300円程度)を検討してください。
② 所定様式の名前・記入方法
各機関で「相続届」の名前と書式が違います。
- 三菱UFJ銀行 →「相続関係届書」
- 三井住友銀行 →「相続関係届」
- 楽天銀行 →「相続手続依頼書」
- 野村證券 →「相続手続依頼書」
- SBI証券 →「相続手続依頼書」「取引残高証明書発行希望書」
提出前に該当機関の公式サイトから様式をダウンロードして、記入方法も併せて確認してください。自由書式で書いて持っていっても受け取ってもらえません。
③ Web受付の可否
近年、Web受付フォームから相続発生を連絡できる機関が増えています。
- Web受付可:常陽銀行(24時間)、武蔵野銀行(24時間)、ゆうちょ銀行(相続Web案内サービス)、楽天証券(相続WEB受付)、北陸銀行(折り返し電話希望日時を指定)、PayPay銀行・住信SBIネット銀行・auじぶん銀行・GMOあおぞらネット銀行 など
- 電話または店頭のみ:メガバンク3行、ゆうちょ銀行(連絡のみWeb可)、対面証券(野村・大和・SMBC日興・みずほ証券)の本格相談
Web受付に対応している機関は、後日の郵送+電話確認で完結できることが多く、来店不要で手続きが進みます。
④ 専用ダイヤルの有無
相続専用のフリーダイヤルを持つ機関と、取引店経由が原則の機関があります。
- 専用ダイヤルあり:三菱UFJ(0120-39-1034)、三井住友(0120-506-177)、ゆうちょ(0120-312-279)、SBI証券(03-4330-9884)、SMBC日興証券(0120-250-878)、岩手銀行(0120-101-121)、京都銀行(075-585-5138)、第一生命(0120-211-157)、日本生命(0120-279-481)、明治安田生命(0120-662-332)、住友生命(0120-307-506)など多数
- 取引店経由のみ:みずほ銀行、りそな銀行、東邦銀行、群馬銀行、静岡銀行、関西みらい銀行、広島銀行など
専用ダイヤルがある機関は手続きフローが定型化されており、相続専門の担当者がいることが多いため、初動はスムーズです。
⑤ 投資信託・株式・外貨預金がある場合の追加処理
預金口座のみの場合と異なり、投資信託・株式・外貨預金などの金融商品がある場合は、以下が追加で必要になることがあります。
- 相続人の証券口座(同社内に開設する必要があるケース)
- 死亡日時点での残高証明書
- 外貨預金の場合:為替レートの確定書類
- 上場株式の場合:4ヶ月以内の準確定申告(譲渡所得が出た場合)
外国株式(米国株等)の相続移管は処理時間が長くなる傾向があるため、早めに着手しましょう。
効率化のコツ:法定相続情報一覧図を最初に作る
複数の金融機関で相続手続きを進めるとき、最も効率的な手順は次の通りです。
ステップ1:法定相続情報一覧図を法務局で取得
最寄りの法務局で「法定相続情報一覧図」の交付申請をします。
- 必要書類:被相続人の連続戸籍・相続人全員の戸籍・住民票(一部)など
- 費用:無料(複数枚発行も無料)
- 所要:1〜2週間程度
みおくりナビでは 相続関係説明図 自動作成ツール を無料で公開しています。法務局へ提出する際の下書きとして活用できます(提出時は法務局所定の様式へ転記してください)。
ステップ2:各機関に法定相続情報一覧図のコピーを提出
各銀行・証券会社・保険会社に、コピー(または原本還付を依頼して原本)を提出します。
- 1枚あれば数十の機関に使い回せる
- 連続戸籍(数十枚)を機関ごとに渡すより圧倒的に効率的
ステップ3:各機関の所定様式(相続届)を取り寄せて記入
機関ごとに様式は違いますが、内容は似ているため、1〜2機関分の記入経験で要領を掴めます。
ステップ4:相続人全員の印鑑証明書を1セット用意
印鑑証明書も使い回せます。発行から3ヶ月以内のものを用意しておけば、ほぼすべての機関で通ります。
「複数機関の手続きで迷ったら」のチェックリスト
- ☐ 法定相続情報一覧図を法務局で取得した(または連続戸籍を揃えた)
- ☐ 相続人全員の戸籍謄本を取得した
- ☐ 相続人全員の印鑑証明書(3ヶ月以内)を用意した
- ☐ 各機関の所定様式(相続届)を取り寄せた
- ☐ 預金通帳・キャッシュカード・保険証券などを揃えた
これだけ揃っていれば、銀行・証券・保険のほとんどの機関で相続手続きを進められます。
まとめ:書類は共通、違いは「期限」と「フォーマット」だけ
機関ごとに違うのは、印鑑証明書の発行期限と、所定様式の名前くらい。
書類自体は4点で共通しているので、
- 法定相続情報一覧図を法務局で1度作る
- 相続人全員の戸籍と印鑑証明書(3ヶ月以内)を1セット用意
- 各機関の所定様式に記入
この流れで進めれば、複数の金融機関を効率的に回れます。
迷ったときは、各機関の連絡先・必要書類を一覧で確認できる以下のページもご活用ください。
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