相続2026年5月2日

相続登記を自分でやる完全ガイド|2024年義務化対応・必要書類・費用を解説

2024年4月から、相続登記の申請が義務化されました。不動産を相続した方は、3年以内に相続登記を行わないと10万円以下の過料を科される可能性があります。

「司法書士に頼むと10万円以上かかる」「自分でやれるなら、やってみたい」――そう考える方は少なくありません。実際、相続登記は仕組みを理解して書類を揃えれば、ご自身でも手続きできる種類の申請です。

この記事では、相続登記を自分で行うための具体的な手順と、必要な書類、費用、期間、つまずきやすいポイントまでを完全解説します。

相続登記とは

相続登記とは、亡くなった方(被相続人)が所有していた不動産の名義を、相続人に変更する手続きのことです。

不動産は、所有者の名義が法務局の「登記簿」に記録されています。所有者が亡くなった場合、相続人がその不動産を引き継ぐためには、登記簿の名義を相続人に変更する必要があります。これを「相続登記」または「相続による所有権移転登記」と呼びます。

2024年4月から義務化

これまで相続登記は任意で、放置されているケースも多くありました。所有者不明の土地が全国で増え、社会問題化したことを背景に、2024年4月1日から相続登記が義務化されました。

主なポイントは以下のとおりです。

  • 相続を知った日から3年以内に登記申請が必要
  • 正当な理由なく期限を過ぎると 10万円以下の過料
  • 2024年4月以前に発生した相続も対象(経過措置あり)
  • 相続人が複数いる場合は、誰か一人が「相続人申告登記」をすれば一旦は義務を果たしたことになる

自分でやるか、司法書士に頼むか

まず判断したいのが、自分でやるか、司法書士に依頼するか、です。

自分でやる場合

  • メリット: 費用を抑えられる(登録免許税+書類取得費用で、不動産評価額1,000万円なら合計4.5万円程度)
  • デメリット: 書類収集・作成に時間がかかる(1〜3ヶ月程度)
  • 向いている人: 平日に法務局や役所に行ける時間がある/単純な相続関係の方

司法書士に頼む場合

  • メリット: 書類収集と作成を全部任せられる、ミスのリスクが低い
  • デメリット: 司法書士報酬が 6万円〜13万円程度 追加でかかる
  • 向いている人: 仕事が忙しい/相続関係が複雑(再婚や代襲相続など)/不動産が複数ある/遠方の不動産を相続した

司法書士報酬の数字は、日本司法書士会連合会が令和6年(2024年)3月に実施した会員アンケートの集計値に基づいています。一般的なケース(土地1筆+建物1棟、評価額合計1,000万円、相続人3名)の平均報酬は 約74,888円、全地区の平均は 約65,346円 という結果でした。

「自分でやるか迷う」という話をよく聞きますが、目安として 相続関係がシンプルで、平日に動ける時間がある方なら自分でやれる と言えます。一方、相続人が多い、過去に離婚・再婚があるなど戸籍を辿るのが複雑なケースは、司法書士に頼んだ方が安全です。

自分でやる5ステップ

ここからは、相続登記を自分で行うための5つのステップを解説します。

Step 1:必要書類を集める

最初に、以下の書類を集めます。

被相続人(亡くなった方)に関する書類

  • 出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍を含む)
  • 住民票の除票(または戸籍の附票)

相続人全員に関する書類

  • 戸籍謄本(現在のもの)
  • 住民票(不動産を取得する人の分は必須)
  • 印鑑証明書(遺産分割協議書を作成する場合)

不動産に関する書類

  • 固定資産評価証明書(不動産がある市区町村役場で取得)
  • 登記事項証明書(法務局で取得、または登記情報提供サービスで確認)

戸籍謄本の取り寄せが、多くの方が最初につまずくポイントです。被相続人の出生から死亡までの戸籍を全て揃える必要があり、転籍や婚姻があると複数の市区町村に請求することになります。

2024年3月から「広域交付制度」が始まり、本籍地以外の市区町村の窓口でも一括で取得できるようになりました。ただし、コンビニ交付では対応していないので、市区町村の戸籍係窓口に行く必要があります。

Step 2:法定相続情報一覧図を作成(任意)

「法定相続情報一覧図」とは、相続関係を一覧にまとめた図のことです。法務局に申し出れば、認証付きの写しを無料で交付してもらえます。

これがあると、銀行や年金事務所など複数の機関で戸籍謄本の束を提出する代わりに、一覧図1枚で手続きできるようになり大変便利です。相続登記だけでなく、銀行口座の相続手続きや生命保険の請求でも使えるので、作成しておくと後の手続きが格段に楽になります。

Step 3:遺産分割協議書を作成(必要に応じて)

相続人が複数いて、不動産を一人が単独で相続する場合は、誰がどの不動産を相続するかを書面にまとめた「遺産分割協議書」が必要になります。

  • 相続人全員の合意が必要
  • 全員が実印で押印
  • 各自の印鑑証明書を添付

ひな形はインターネット上で無料配布されているものがありますが、不動産の表記は登記事項証明書のとおりに正確に記載する必要があります(地番と住居表示は違うので注意)。

なお、遺言書がある場合や、法定相続分どおりに共有する場合は、遺産分割協議書は不要です。

Step 4:登記申請書を作成

法務局の公式サイトに、相続登記の申請書のひな形と記載例が公開されています。

  • 法務局公式サイト「不動産登記の申請書様式について」を参照
  • 「所有権移転登記申請書(相続)」を選択

申請書には以下を記載します。

  • 登記の目的:「所有権移転」
  • 原因:「○年○月○日相続」(被相続人の死亡日)
  • 相続人:氏名、住所、被相続人との続柄
  • 不動産の表示:登記事項証明書のとおりに正確に
  • 課税価格・登録免許税

不動産の表示は、登記事項証明書をそのまま転記するのが安全です。一文字でも違うと申請が却下されることがあります。

Step 5:法務局に申請

書類が揃ったら、不動産の所在地を管轄する法務局に申請します。

  • 窓口で提出:その場で確認してもらえる
  • 郵送で提出:書留郵便で(簡易書留以上推奨)
  • オンライン申請:登記・供託オンライン申請システム(法務省)から、ただし慣れていないと難しい

申請から完了まで、通常1〜2週間かかります。完了後は法務局から「登記識別情報通知(昔の権利証にあたるもの)」と「登記完了証」が交付されます。

必要書類のチェックリスト

ここまでの内容を、チェックリストにまとめます。

必須書類

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式
  • 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
  • 相続人全員の戸籍謄本(現在のもの)
  • 不動産を取得する相続人の住民票
  • 固定資産評価証明書
  • 登記事項証明書(取得は任意だが、書類記載の確認用にあると便利)

ケースに応じて追加

  • 遺産分割協議書(相続人複数で単独相続する場合)
  • 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書を作る場合)
  • 遺言書(遺言書がある場合)
  • 検認済証明書(自筆証書遺言で家庭裁判所の検認を受けた場合)

費用の内訳

自分でやる場合、必要な費用は主に以下のとおりです。

費用項目 金額 備考
登録免許税 不動産の固定資産評価額 × 0.4% 法定
戸籍謄本(全部事項証明書) 450円/通 全国一律(戸籍法施行規則)
除籍謄本・改製原戸籍謄本 750円/通 全国一律(戸籍法施行規則)
住民票・住民票の除票 300円程度/通 自治体により200〜400円
印鑑登録証明書 300円程度/通 自治体により異なる
固定資産評価証明書 300〜400円程度/通 自治体により異なる
戸籍の附票 300円程度/通 自治体により異なる
郵送費 数千円程度 書類請求の郵送費・登記申請の郵送費合算

マイナンバーカードによるコンビニ交付を活用すると、住民票・印鑑証明書などは200〜250円に値下げされる自治体が多くあります。ただし、相続で必要な「被相続人の出生から死亡までの連続戸籍」は本籍地以外の戸籍を含むため、コンビニ交付では揃えきれず、窓口または郵送請求が必要になるケースがほとんどです。

:固定資産評価額が合計1,000万円の不動産(土地500万円・建物500万円)を相続した場合

  • 登録免許税:10,000,000円 × 0.4% = 40,000円
  • 戸籍関係(5〜10通程度):3,000円〜7,000円
  • 住民票・印鑑証明書(相続人3名分):1,800円程度
  • 固定資産評価証明書:300〜400円
  • 郵送費:1,000円〜3,000円
  • 合計:約45,000〜52,000円

同じケースを司法書士に依頼した場合、上記の実費に加えて司法書士報酬が約74,888円(日本司法書士会連合会・令和6年3月アンケートの平均値)かかるため、総額は 約12〜13万円 が目安となります。

100万円以下の土地は登録免許税が免税

不動産の価額が100万円以下の土地について、相続による所有権の移転登記の登録免許税が 免税 されます。

  • 令和7年度の税制改正により、対象が 全国の土地に拡大
  • 適用期限は 令和9年(2027年)3月31日まで
  • 複数の土地を相続する場合は、土地1筆ごとに個別判断(合計で評価しない)
  • 免税措置を受けるには、登記申請書に法令の条項(租税特別措置法第84条の2の3第2項)の記載が必要

地方の評価額が低い土地を相続する場合は、この免税措置で大きく負担を減らせる可能性があります。法務局の窓口で確認するのが確実です。

出典相続登記の登録免許税の免税措置について(法務局)

期間の目安

書類収集から申請完了まで、自分でやる場合のおおまかな期間は以下のとおりです。

  • 書類収集:1〜2ヶ月(戸籍が複雑な場合はもっとかかる)
  • 書類作成:数日〜1週間
  • 法務局審査:1〜2週間

合計で 2〜3ヶ月程度 を見込んでおくと安心です。

よくあるつまずきポイント

最後に、相続登記を自分でやる方がつまずきやすいポイントを5つ挙げておきます。

1. 戸籍が古くて読めない・取り寄せ先が分からない

明治・大正時代の戸籍は手書きで、変体仮名や旧字体が使われていることがあります。法務局の窓口で「ここは何と読みますか」と確認するか、市区町村の戸籍係に解読を依頼するのが確実です。

2. 不動産の表記がわからない

「地番」と「住居表示(番地)」は別物です。登記簿では「地番」を使うので、固定資産税の納付書や登記事項証明書で正確な地番を確認します。

3. 登録免許税の計算ミス

固定資産評価額の0.4%が原則ですが、一部に軽減措置があります(土地の評価額が100万円以下の場合は免税など)。法務局の窓口で確認するのが確実です。

4. 申請書の不備で却下される

窓口で提出すれば、その場で軽微な不備は教えてもらえます。郵送だと修正のために何度もやり取りすることになるので、初めてなら窓口提出を推奨します。

5. 相続人の中に未成年者・行方不明者がいる

未成年者がいる場合は特別代理人の選任、行方不明者がいる場合は不在者財産管理人の選任が必要です。これらは家庭裁判所への申立てが必要で、自分でやるのが難しいケースです。司法書士または弁護士に相談しましょう。

自分でやる前に整理しておきたいこと

相続登記を自分でやるかどうかを判断する前に、まず全体像を把握しておくと迷いません。

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